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デパートのフレグランス専門店からダイレクトメールが送られてきた。Eメールではなく封筒での直筆の手紙。女性とわかる担当者の名が書かれてあった。折角なので仕事帰りに立ち寄る。硝子の瓶を眺めていると男性の店員さんに声を掛けられる。有名コスメメーカーではなく初めて聞くブランドを勧められる。お客様のイメージですとこちらをお勧めしますと言われ少し戸惑う。ビスポークのスーツにカフリンクスストレートチップの靴、、。ビスポークって分かるのか聞いてみるとジャストサイズと切羽、ショルダーから背中にかけてのラインなど細かく説明していた。イタリアのデザイナーの名前、切羽のハネ具合などサルトリア顔負けの知識に驚愕と尊敬した。

肝心のフレグランスは数種類のムエットから香りを嗅ぐ。これからの季節にはシトラスよりもウッディだろうと勝手に思うけど、この選び悩んでいるひとときが至福の時間である。結局冬を連想させる香りを選ぶ。会計と梱包を待っていると女性の店員さんから声を掛けられる。ダイレクトメールの話をすると直ぐに分かったらしいとのこと。顔を覚えるのも商売とは言え半年近くの来店なのによく覚えているもんだとここでも驚愕と尊敬。小生どこにでもいる平凡なサラリーマン。可もなく不可もなく凡人であっても、顔から服装まで細かく見られていたとは驚きである。スマホに夢中になり本来見えるものが見えなくなっている現代においても見ている人は見ている、また見られている。